翻訳家を目指す方に知っておいてもらいたい、権利と責任についてお話します。
一般的に、翻訳は翻訳出版権や採算の関係から、ある本を日本で翻訳できるのは、原則として一度きりだ。
その大切な1回で翻訳家が解釈を誤れば、間違いはずっと残ることになる。
万一訳し漏れがあれば内容が欠けたまま伝わるし、日本語の文章が稚拙であれば、本来の内容や原作の味わいが日本の読者には伝わらない。
自分が訳した日本語に対して全責任を負う、翻訳家の役割は重大だ。
翻訳は一度きり、とのことだが、こうした重責を担う翻訳家の権利は、著作権法でしっかり守られている。
原作の著作権はもちろん原作者にあるが、翻訳された日本語についての著作権は翻訳家に帰属する、と規定されいるので安心だ。
日本語に訳した文章を翻訳家に無断で変更することは、本来は許されない。
しかし現実には、やむを得ず編集者が手を加えることがある。
翻訳家から上がってくる原稿の質が低く、そのままではとても出版できないと編集者が判断する場合がそうで、残念ながら、こうしたケースは少ないとは言えない。
出版の基準を満たす翻訳力に欠け、訳文に対する責任が果たせないということは、翻訳家としての権利を放棄するにも等しいことだと心得ておきたい。